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技術スタッフによるコラム

特別掲載:2020年学会賞

「学会賞 技術賞を受賞して」

宮越工芸(株) 宮越一郎

この度、栄誉ある貴学会の学会賞技術賞を賜り、恐悦至極に存じます。ご推薦をいただきましたアルミニウム合金工場塗装工業会(ABA)の皆様に改めて御礼申し上げます。

さて弊社は現在、建築用アルミニウム合金材料の塗装を主な生業としておりますが、1950年に私の祖父が創業して以来、当地域の伝統産業である銅器製造に携わり、その着色技術の発展に寄与して参りました。当時の壺・花瓶等の美術品に使用されていたワイピングや刷毛による着色技法は、現在も建築デザインの一部として息づいています。

アルミニウム合金材料を手掛けたのは工場設備を新設した1970年からです。高度経済成長期を背景に、近隣にあるアルミニウム合金材料を扱うメーカーの発展と共に成長させていただきました。特にビル用建材製品の塗装においては、1970年、当地域の物件にふっ素樹脂塗料を使用して以来、全国の様々な著名建築物に携わることができ、併せて弊社の設備導入も着実に行なってきました。おかげ様で多くの施工実績による製造ノウハウや技術を蓄積することができました。これも一重にお客様各位と業界の諸先輩方々のご指導の賜物と重ねて御礼申し上げます。

近年、建築資材の調達が多様化するにつれ適正な塗膜性能の確保が声高に求められ、2015年のアルミニウム合金材料工場塗装工業会(ABA)の発足に至り、私が会長に選出されました。本工業会は建築用アルミニウム合金材料に対し、適正な塗膜性能を確保するため適正な材料による適正な塗装仕様の普及推進を目的とした塗装工場及び塗料・機器業者等の団体です。貴学会の研究委員会(近藤照夫委員長)により長期間に亘って研究・編纂された「建築用アルミニウム合金材料 加熱硬化形溶剤系塗装標準仕様書・同解説」や「建築用アルミニウム合金材料 粉体塗装仕様標準指針・同解説」に準じて、会員一同、日々本書の実践と普及展開に努めています。また会員企業には素地調整の設備を保有していることを入会条件の一つとしていますが、素地調整の工程はそれだけ重要な工程であり、本工業会の特徴となっています。このことは、要求される高い製品品質に着実に応え、建築物などの社会インフラを後世に残すという責任の一端に繋がっています。

また本工業会は、海外を含めた各地の塗装工場や関連施設の現場研修、日本国内各地での関係企業を対象とした勉強会の開催等を主な活動としていますが、他には建築資材への工場塗装に関し、塗装管理技術士等の「認定制度の創設」を目指しています。現状、建築業界で求められるアルミニウム合金材料への塗装品質管理に関し公的な資格制度が制定されていないことから、取組みを始めることにしました。特にクロムフリー系化成皮膜処理を含む仕様についてはその専門知識や管理能力等が必要ですが、これらを含めた総合的な能力を持つ認定者が工場運営をすることで、適正な塗膜性能の確保に繋がり、工場塗装仕様の信頼がより高まるものと考えています。このように適正な塗装仕様の普及と推進への取組みは業界全体の信頼に繋がっていると思います。今後共、「地球環境の保全」と「人間の健康安全」の理念に基づき、事業活動を通して我国の建築仕上げが世界に誇れるものになるよう努め、自己の研鑽に励んで参りますので、引き続きご指導いただきますようよろしくお願い申し上げます。

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