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技術スタッフによるコラム

特別掲載:2018年学会賞

「学会賞 技能賞を受賞して」

筒井工業(株) 前島靖浩

この度は日本建築仕上学会学会賞技能賞を頂き、誠にありがたく光栄に存じます。技能賞に推薦いただきましたアルミニウム合金材料工場塗装工業会(ABA)の皆様並びに日本建築仕上学会の選考委員の方々に厚く御礼申し上げます。

受賞に際し、金属材料に対する工場塗装における品質管理と環境配慮の積極的な推進に関しましてご評価を賜りましたこと大変うれしく、感謝申し上げます。  弊社は昭和38年に創業し、昭和42年に日本で初めて粉体塗装を実用化して以来、粉体塗装の専業コーターとして設備力・技術力を磨いてまいりました。当社経営理念「常に新しい技術の吸収と開発に努め、社会の幸福を実現する」にあるように、技術力でお客様に貢献する企業であることを標榜しております。

粉体塗装は50年余の実績があるのですが、こと建築外装部材への粉体塗装の歴史はまだ浅いものになります。平成8年に弊社創業者の筒井万司が、既に環境配慮で先行していたヨーロッパ諸国を視察しました。その折粉体塗装が施されたアルミサッシがビル建材や住宅・店舗部材として広く屋外で使用されていることを見てまいりました。この波は必ず日本にも来るとみた筒井は、帰国後直ちにアルミニウム用素地調整設備(クロム酸クロメート処理)の導入に踏み切りました。しかしながら、当時国内でのアルミニウム表面処理においては、陽極酸化複合皮膜処理または溶剤系塗装が主流であり、粉体塗装の認知度はほとんどありませんでした。やむなくエクステリアを中心に塗装実績を上げてまいりましたが、ビル外装建材への適用は進みませんでした。平成20年を過ぎたあたりからようやくビル建材にも環境配慮型塗装仕様を求める声が聞かれるようになり、素地調整においてもクロムを含まないクロムフリー化成被膜処理の適用が望まれるようになりました。そこで弊社でもクロムフリー化成被膜処理に粉体塗装を施した試験体レベルの性能検証をスタートさせたのですが、処理条件や使用する塗料種によって性能にばらつきがみられました。さらにクロムフリー化成被膜処理は得られた皮膜が無色透明であることから、処理が適切になされたかどうかを外観評価するのは困難であることも容易な量産化を阻んでおりました。これらのことから、量産プロセスの確立においては、何を持ってプロセスパラメーターが正しいと言えるのかをすべて検証しておく必要があると考え着きました。そのために、弊社では平成25年にL6.5mのクロムフリー化成被膜処理槽を導入し、長尺アルミニウム形材を用いて約3年にわたり試行錯誤を繰り返した結果、ようやく処理工程の様々なパラメーターの根拠を得るに至りました。この度の受賞は、こうした取り組み姿勢と積み重ねをご評価いただいたものと思い、感慨深いものがございます。勿論、こうした膨大なデータの蓄積は小生一人で出来るわけもなく、粘り強く実務をやり遂げた技術スタッフ陣の力によるところ大であります。今回の受賞は、技術スタッフ全員と分かち合いたいと思っております。

今後は環境配慮型塗装仕様を1つでも多くの建築案件にご採用いただくべく、地道に努力を積み重ねて参る所存です。皆々様にはどうか今後とも引き続きご指導を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

この度の技能賞受賞、誠にありがとうございました。

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