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技術スタッフによるコラム

特別掲載:2019年学会賞

「学会賞 技能賞を受賞して」

宮越工芸(株) 前田一輝

まず始めに、日本建築仕上学会 学会賞 技能賞の受賞に際し、ご推薦頂きました ものつくり大学 近藤名誉教授、そしてアルミニウム合金材料工場塗装工業会(ABA)の皆様に深く御礼申し上げます。

早いもので、建築用金属材料への工場塗装を専門とする宮越工芸株式会社に入社して25年が経ちました。当初は、アルミサッシや門扉・フェンス、部品等の住宅用金属材料に対し、木目調や石目調、金属めっきや自然発生錆等の様な特殊な意匠性を付与する新しい塗装技術の開発や、各種の塗料・塗膜の性能について評価を実施して、顧客の要求に応じた塗装仕様を選定し、それらを実用化するために生産ラインにおける塗装や焼付に関する諸条件を検証して標準化に繋げることを主な業務としていました。

21世紀に入り、地球環境の保全や人間の健康安全について、世界的な規模で大きな社会問題として強く取り上げられるようになって来ました。アルミニウム合金材料への工場塗装においては、素地調整として6価クロム系化成皮膜処理を行った後、主に溶剤系塗料を用いて塗装を施している。6価クロム系化成皮膜には人間の健康を害する6価クロムを含有しており、また、溶剤系塗料を用いた塗装では、地球環境の保全と人間の健康安全に悪影響を与えるVOC(揮発性有機化合物)を発生するため、これらが環境配慮に対する課題となっている。

私の業務が転機となったのはこの頃からで、それまでは社内における業務に特化していましたが、アルミニウム合金製建築材料に適用する粉体塗装の耐久性評価委員会の一員として、VOCを含まない環境に優しい粉体塗装の日本国内における普及展開を図ることを目的に、大韓民国および欧州(ドイツ、オーストリア)を訪問して、粉体塗装が適用された建築物の実態調査に参加させて頂きました。当時を振り返ると、海外経験が殆ど無かった故に、日本を離れることだけでも大きな出来事でしたが、この調査結果が今後の粉体塗装の普及展開に影響を与えるかと思うとその責任が背中に大きく伸し掛かり、緊張を隠し切れないまま調査していたことを思い出します。

私にとってこの経験はとても大きなものであり、その後は、日本建築仕上学会 環境配慮形塗装仕様検討委員会にも参加する機会が増え、6価クロムを含有しないクロムフリー系化成皮膜処理やVOCを含まない粉体塗装に関する試作の立会いや試験・評価等も担当させて頂きました。また、アルミニウム合金材料工場塗装工業会においては、発足当時より大変お世話になり、会員企業のスタッフとして勉強会や工場視察およびその成果の取り纏め役の担当等、多くの貴重な経験をさせて頂き、そして今回この様な賞を受賞できましたこと、関係者の皆様方に感謝しております。

今後も、微力ではありますが工場塗装における技術開発および環境に配慮した塗装仕様を推進して行きたいと考えておりますので、引き続きご指導ご鞭撻の程宜しくお願いいたします。

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