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環境対応型高品質焼付け塗装システムの日本における展開について(文:野平修氏)*

Chapter 2

型材カーテンウォールヘの粉体塗装仕上げ

─ 超高層ビルM1計画 ─

施主: M不動産 設計: N建設計 施工: 鹿島東京建築支店 カーテンウォールメーカー: 現リクシル(旧トステムタイエ場)、現リクシル(旧新日軽中国工場)、現三協立山アルミ(宮越工芸) ガラス: 大興物産海外事業統轄部

《粉体塗装、超高層ビルの外装へ》

2010年7月、日本に初めて粉体塗装を導入してから4年、ついに、超高層ビルの外装カーテンウォールに、高耐候性ポリエステル粉体塗装を採用することができた。ヨーロッパの超高層ビルに採用されてからおよそ10年後のこととなる。小生の予想より5年は早いスピードである。

《お施主様、設計者の環境配慮に対する意識の高揚》

この建物は、皇居に隣接して立地する記念碑的建築物である。従って、施主、設計者より要望されたことは、“環境に優しい"というキーワードであった。VOCや二酸化炭素の発生の低減ができ、高耐候性のある粉体塗装の提案に対して、快く承諾していただけたのは、そうした背景があってのことである。塗装面積、約106, 000下に対し、VOCの低減が約34t(ドラム缶で185本分)、二酸化炭素の低減が約180t(杉12,900本が1年間に吸収する量)とかなりの環境配慮ができたことは、高い評価をいただくことに繋がった。焼付け塗装の今後の方向性をよく示したケースとなった。

ヒートラベルによる実体温度の確認

ヒートラベルによる実体温度の確認

塗膜厚さの測定

塗膜厚さの測定

型材の勘合の確認

型材の勘合の確認

《採用の決め手となったタイガードライラック社の品質保証》

いつの世の中でもそうであるが、実績ほど強いものはない。焼付け塗装の世界では、カイナー500系がまさに20年の実績を引っさげているのだから圧倒的に強い。新参者の粉体塗装には分が悪い。そんなところに、タイガードライラック社の認定塗装工場で塗装すれば、代表的な耐久性指標である光沢保持率について保証が出るという画期的な制度が存在した。塗膜性能、AAMA2604ベースのシリーズ58という粉体塗料は、施主、設計者から高評価をいただき採用に至った。

《超高層ビルのカーテンウォールという大規模な粉体塗装に対する品質管理》

幾ら品質保証されるといっても、100,000面を超える高耐候性ポリエステル粉体塗装であるから、品質的なトラブルは絶対に回避しなければならない。本生産に先立ち、実際に採用する予定の塗装工場で、擬似型材を使用して、実際に使用する塗材でライン塗装を実施し、①型材の実体温度の確認、②昇温カーブ、キープ時間の確認、③密着性試験、④膜厚測定、⑤鉛筆硬度、⑥耐溶剤試験、⑦耐衝撃試験、⑧沸騰水浸漬後の密着性試験、⑨型材の勘合試験等々考えるべき品質管理試験をすべて実施し、所定の性能が発揮できることを確認した。本生産では、海外の3工場、国内の1工場で焼付け塗装を行ったが、いずれも素晴らしい焼付け塗装結果となった。

《皇居お堀端に立地する超高層外装カーテンウォールの雄姿》

薄茶の石に取り合う型材にベージュ系メタリック色を、ガラスを組み込む型材にダークグレー系メタリック色という2色の高耐候性ポリエステル粉体塗装の外装カーテンウォールが“皇居"お堀端に雄姿を見せている。その神々しい佇まいは、建築業界紙や塗装業界紙にも取り上げられ、今後の粉体塗装の輝かしい動向を示唆しているようである。

*野平修氏 野平外装技術研究所代表 元鹿島建設建築本部技師長

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