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環境対応型高品質焼付け塗装システムの日本における展開について(文:野平修氏)*

プロローグ

日本で初めての内外装高耐候性
ポリエステル粉体塗装仕上げアルミカーテンウォール

─ S1計画 ─

S1計画全景

施主: M地所 設計: M地所設計 施工: 鹿島東北支店 カーテンウォールメーカー: 現リクシル(旧トステムタイエ場)、現昭和リーフ(旧昭和鋼機中国工場) ガラス: 大興物産海外事業統轄部

《粉体塗装との出会い》

私が初めて粉体塗装に出会ったのは、2005年10月、外資系粉体塗料メーカーのタイガードライラックジャパン社のN澤社長から「一度、ドイツ、オーストリーの粉体塗装した外装材を見に行きませんか?」と声をかけられた時である。小生が1987年に強溶剤型熱可塑性フッ素樹脂(カイナー500系)焼付け塗装システムをアメリカから日本初に導入して以来、20年近く安定した伸びを示していたので、今更、新材料を導入しなくてもとの気分ではあった。ところがN澤社長が「他のゼネコンさんでは興味を示していただけなかったんですよ。」という話をされた時から、持ち前の反骨精神が首を出し、一転してヨーロッパ行きを決めた。

《粉体塗装した超高層ビルの外装に直面して》

フランクフルトに入り、いきなり、粉体塗装をした超高層ビルの外装を見ることになる。朝日に映える白色のカーテンウォール。「きれいだ!」思わず声に出してしまう。以降、ベルリンやウィーンで数々の粉体塗装案件を見て回った。カイナー500系では再現できないカラーリングの豊富さ、色々なテクスチャー、これは施主や設計者が喜ぶだろうと直感した。

S1計画外装近景

S1計画外装近景

Sセンター(ベルリン:1999)

Sセンター(ベルリン:1999)

ハンカチで拭いた状況

ハンカチで拭いた状況

《汚れを落とす魔法》

日本と違って、欧米は外装材をクリーニングする習慣がない。ウィーンにあるB本社ビルは、1988年竣工以来、17年間メンテナンスしていない。白い壁面は当然薄汚れている。ハンカチで軽く拭いてみた。汚れが瞬時に落ちる。100%塗料である粉体の良さがここにある。「きれい好きの日本人は喜ぶだろうなあ。」がその時の正直な感想である。

《日本でどのように粉体塗装を普及させる?》

まずは、日本での第一号を早期に実現させたい!中規模で著名な設計事務所がかかわっていただける案件がベストである。その頃、S1計画の外装支援を東北支店から要請された。でも現設計はシルバーアルマイト。設計者に対してシルバーメタリック系の粉体塗装見本を提示したが、何しろ日本は、カイナー500系が席捲していた。「塗装焼付け系ならカイナー500系のフッ素でしょ。」当然の設計者のリアクションである。「これは駄目か?」と落ち込む。ところが後日、「これでいきましょう。」とのレスポンス。品質に厳しい設計事務所さんですから耐候性についての検証や意匠性の良さを十分吟味された上でのご判断であったのでしょう。さすが大手設計事務所の慧眼である。

《高耐候性ポリエステル粉体塗装の外装カーテンウォールの実現》

こうしてライトグレーメタリック色とブラックソリッド色の2色の高耐候性ポリエステル粉体塗装の外装カーテンウォールが“森の都”仙台に誕生した。関わったカーテンウォールメーカー2社の真摯な品質管理により、5年経った今でも美しい外観を見せている。この案件が、日本における高耐候性粉体塗装による外装カーテンウォールの発展に寄与したことは間違いない。

*野平修氏 野平外装技術研究所代表 元鹿島建設建築本部技師長

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