■ 肥満化する赤坂うさぎ
もうすっかりうさぎの日課となっている朝シャワーは、とても気持ちがいいものです。昨晩、多少深酒していても温水(時には冷水)に打たれると身体からアルコール分が抜けていきすっきりとした気分になるものです。読者の皆さんの中にもそういう方がいらっしゃるでしょう。でも、こうした清清しさの中で、ただ一点だけ憂鬱になることがあります。いい気分で風呂の折り戸を開けると、洗面所の鏡に下腹が写るんです。
両胸の下辺りから、まず胃袋部分がぽっこりでて、更にへその辺りから下腹部にかけて、オーストラリアのエアーズロックを思わせるような出っ張りが続いています。身長が165cm足らずのところにきて、体重が70kg超にならんとしてますので、完全にメタボリックなうさぎと化しています。
人間を始めとして、一般に動物がメタボリックになると様々な身体的機能障害を引き起こすそうで、命を縮める事になることが段々と判明してきているようです。おーっ怖い怖い。
■ 肥満化した会社
昨今、うさぎの目で周辺を見ておりますと、人間と同様に、人間の集団で構成されている会社もまた随分メタボリック化が進んでいるのではないでしょうか?昔は、かなりシンプルな会社でわかりやすかったように思います。仕事で言うならば、ちょっと極端ですが、“町内会”レベルの付き合いで事が足りることが多かったような気がします。
それは、今ほど情報化社会になっておらず、限定された地域内のやり取りで大部分の話がついてきたということでしょう。また、問題が生じても問題解決までの時間的余裕もかなりあったように思います。
ところがどうでしょうか?ITの急速な進歩により、地域の違い等の物理的距離は問題にされなくなりました。また、事態解決までの時間も飛躍的に短時間になってきましたね。つまり、スピードが要求される世の中になってきているんです。当然、神経は張り詰め、緊張状態が持続しますので、ストレスあるいはプレッシャーを感じている時間は長くなりますね。個々人がそれぞれ制約された時間の中で膨大な“情報”という食物を与えられるわけですから、その集合体である会社もまた間違いなくメタボリックな状態に置かれていると思われます。
最近、多方面でスリム化が叫ばれているのもこうしたことが背景になっているのでしょう。今回はその辺について言及してみたいと思います。
■ ダイエットの流行
最近、新聞紙上やテレビなどで、盛んに“ダイエット”という言葉がみられたり、聞かれたりしますね。“自分はメタボになってしまった。”、“メタボにはだけはなりたくない。”あるいは“スリムで美しいボディラインを取り戻したい。”等という気持ちが、現代人の心には深く刻みこまれているのでしょうか。
さて、ダイエットにも色々な手法があるようで、きちんとした専門医の指導の下に計画的に減量していくものから、ほとんど飲まず食わずの断食に近いものまで実に幅広いですね。こうした各レベルのダイエット方法が、そこそこにヒットしているのですから、“ダイエット市場”は相当に大きいんですね。
でもその反面、行き過ぎのダイエットが、栄養失調に陥らせる事になり、細菌類に対する抵抗力失って様々な疾患にかかったり、食物そのものを受け付けなくなる拒食症に至るケースもあるようです。減量ということにも科学的な対応が必要ということでしょう。スリムな身体を獲得しても病気になってしまったんでは、何にもなりません。なんでも行き過ぎはいけませんね。
■ 会社メタボ化のメカニズム
ここでは、人間の集団である会社についてのメタボ化のメカニズムを見てみましょう。
まず、皆さんの会社の上司の言葉を思い出してください。眉間に皺を寄せながら、“現代は情報戦だ。とにかくありったけの情報を集めろ!”とか“情報収集力の劣るやつは落伍者だ!”とか息巻いている部長や課長がいませんか?
情報は、その活用の仕方が想定できて集める、すなわち目的を持って集めるのであれば有効に活用できますが、ただただ、あれもこれもと関係しそうなものをありったけ集めたのでは、集めたということだけで満足してしまい、情報そのものはちっとも活かされないということになりますね。
その昔、皆さんが学生時代だった頃を思い出してみてください。受験前、試験問題の対策と傾向を収集するために、関係しそうな参考書を片っ端から集め机の脇にうず高く積み上げた記憶はありませんか?そうしてなんとなく安心して勉強が終わったかの様な錯覚を覚え、積読になってしまった。結局は受験日まで一度も開くことがなかったマッさらな本が机上に空しく残っていたことを。これなど、まさに情報収集そのものが目的となってしまった悪しき例でしょう。
社会においても、情報分析の方法、解析のシナリオを全く描かずに情報収集し、上司も部下も“よくこれだけのものを集めた。”とか“これで他社に勝ったも同然!”とかのたまい、実質のアクションをしないケース、経験したことないでしょうか?“机の上だけが妙にメタボになっている。”、そんな職場を見かけませんか?
今はIT時代、インターネットの検索窓にキーワードを入れさえすれば、関係する情報は瞬時に集めることが可能です。国会図書館に足を運ばなくても、専門図書を扱っている書店に行かなくても“らしい情報”はすぐ手に入ります。でもあくまでも“らしい情報”どまりです。インターネットを通して無料で手に入る情報は、半ば“公開情報”で誰でも公平に手に入れられるのです。そんなオープン情報で埋まっている職場は、資料がメタボ化しているだけで、決して利益を上げる集団、会社とはなりませんね。
■ スリム化?むしろスラム化する職場
バブルが弾けて以来、“今期も赤字だよ。”とか“利益が上がらないなぁ。”とぼやく職場や会社が随分と増えましたね。そして“他社も余り儲かっていないんだからうちも儲からなくてもしょうがない。”といった妙な連帯感すら醸成しているような感じがしませんか?
スリム化という目標に対しては、利益が出ない事に対し、“経費削減”といういわば受身的な手法でしか対応していない、ですから組織が不活性になっています。損益計算書上は帳尻あわせが出来るでしょうが、会社としては著しく沈滞していますね。これをもって“会社がスリム化できた。”というのはいささか短絡的ですね。むしろスラム化した職場となっているのではないですか?
■ チャレンジスピリッツ、真のスリム化職場とは?
前述したような状況下で、どの分野においても、高利益を出している会社がありますね。そうした会社は、他社に先駆け、誰でもが手に入れることが出来る“らしい情報”に引きずられることなく、“真に確度の高い情報”を得るために、昔と同じく“足で稼いだり”、“耳で聞き分けたり”、“触覚で感じ取ったり”と高感度センサーを持った社員を必要最小限集め集団化させていますね。五感に卓越した人材を集め、常識的な行動とは異なった手段で情報を収集していきます。そして集めた情報を“積読”ではなく、オープンにして徹底的に議論して内容を煮詰めていく、そうしたある意味攻撃的な情報化を図っていますね。
そして共通しているのが、大企業ではなく、小規模集団の会社であること、たとえ会社全体が大企業であっても、あるテーマをやる先鋭化した少人数集団あるいはチームとなっていますね。今話題になっている出版社やコンビニの弁当部門等、皆そうですよね。そしてこれまでのしきたりとか常識といった枠を超えての企業活動になっていますよね。これらがまさにチャレンジスピリッツを有した真のスリム化職場といえるのではないでしょうか?
■ 会社ダイエット化時代へ
高度経済成長時代は、確かに大企業がリードしてきました。しかし、うさぎの目からは、バブル崩壊後はどうも違うような気がします。既成の概念に捕らわれることなく、タイムリーに、テンポラリーに物事に対処できる感性の鋭い人々による少数精鋭集団が、次世代を切り開いていくような気がしてなりません。種々の贅肉をそぎ落とし、スリム化した組織にし、オープンな議論が自由闊達に出来る雰囲気を作るための“会社ダイエット化専門医”が今こそ求められています。“経費削減策”だけをとり続けたら、会社もやがて拒食症をわずらい、それこそ二度と立ち直れない事になるでしょう。もうそれに気づいていい時期ではないでしょうか?