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うさぎの独り言

第十回

愛、あなたと二人 - 惜しみなく愛の言葉を -

■ 愛の唄

“♫ 愛、あなたとふーたり♪”。一昔前、佐良直美という歌手が唄った“世界は二人のために”という名曲です。ゆったりとした曲想が、1960年代後半の高度成長期という時代背景の反面教師となったのでしょうか、大ヒットしました。当時の人々は、余りの忙しさに追われる日々で、身体的に殺伐とした状況に追い込まれたために、愛の唄に“憩い”を求めたのでしょうか?

そして、現代はというと、スキマスイッチ、オレンジレンジ、EXILEといったグループ(読者の方はご存知ですか?うさぎはカラオケ好きで最近ではこの辺の曲をよく聞きます。)が、こぞって“愛の唄”をヒットさせています。'60~'70年代と違い、現代の経済は低成長期ではありますが、昔とは違う意味で、精神的に殺伐とした時代に入っているんだということを人々はなんとなく肌身に感じ取っているのかもしれませんね?

■ 愛を巡って

愛というと、人類愛、博愛、親子愛、兄弟愛、恋愛等々、色々な愛の形がありますね。うさぎには、愛という言葉は、静的できれいな語彙というよりも、人間同士がどのようにかかわっていけば幸せでいられるか、すなわち、どうすれば幸せの形を形成できるかを問うている能動的な言葉に感じられてなりません。

昨今頻繁に生じている事件の多くは、いずれも、愛が欠如していて、人とのかかわり方を自己中心的にしかできない人間が起こしているような気がします。きっと相手や第3者とうまくコミュニケートする技術が欠如しているのではないでしょうか。おそらく幼少期に、両親や自分を取り巻いている人々から降り注ぐ程の愛を受けたことがないままに大人になってしまったのでしょう。結局、何とか人とかかわっていたいという衝動が、変な形で現れてしまうのではないでしょうか。

また、犯罪とまでは行かないまでも、どのように人間関係を築いていったらよいのかで日々悩んでいる諸氏も多分いらっしゃるでしょう。今回はそのあたりの解決方法にアプローチしてみようと思います。

■ 上司 VS 部下

昭和26年生まれのうさぎと部下の年齢差はおよそ20歳くらいです。団塊の世代のあと10年くらいでしょうか、少子化の時代が続きましたから、部長の部下がいきなり係長という図式がどこの会社でも見られるのではないでしょうか?本来なら間に、次長、課長がいるべきなんでしょうがね。うまくいきませんね。

最近、部下と話していて、つくづく思うことがあります。上司に対して、明らかに遠慮した物言いをする部下、あるいは反対に、“親父みたいな上司に話したってどうせ理解されない。”と完全に開き直ってしまった部下もいますね。

こうなると身のある会話が成立せず、話の内容の伝達がうまくいきません。上司、部下共にそれぞれ悩む事になります。そういう会社は活気がなく、効率も悪いため、いい成果が出ませんね。こういった傾向が増加して社会全体に広がるとこれはもう恐ろしい事になりますね。今の日本、若干そういう雰囲気が出てきてはいないでしょうか?

■ 金八先生に見る愛の世相

“3年B組金八先生”というヒットドラマがありますね。やや劇画的なストーリー展開ではありますが、あれだけの高視聴率です。何か人に訴えるものがあるのでしょう。ちょっと訳有りの生徒が出てきて、それに金八先生が思い切り突っ込んでいく、ちょうど歳の差が20歳位の設定でしょうか。学校と会社という違いはありますが、今時の会社内のシチュエーションはよく似ていませんか?

金八先生が愛情を持って問題児の生徒に接していくことで、生徒も次第に閉ざした心を開いていき、段々とコミュニケーションが成立していく。おおよそそんな感じでしょうか。

ひるがえって、皆さんの会社においては、そんな熱血上司はいるでしょうか?また、問題の多い部下というのもいるでしょうか?一見、両方いないように見えますが、実は、どこの会社でも本当は少なからずいるとうさぎは考えています。

■ 今のオフィスはクールビズ?

最近建築されるビルは、セキュリティが完璧すぎて、部外者からするとなんとなく、“あなたは信用できない。”と締め出された感じがして、なんとなく冷たさを感じませんか?また、そうしないと安全が担保されなくなった時代背景も物悲しいですね。

更に、同じ社内にあっても、パソコン、電子機器類が整備されたオフィス環境では、メールのやり取りだけで事が済み、直接話法を取らなくてもある程度仕事が成り立つ、そんな状況になっていませんか?メールを打つことで仕事が終了したと考える部下、それを確認しただけで了解してしまう上司、こんなことで果たして本当の仕事ができているのでしょうか?なんとなく事務的で表面的な仕事になっていませんか?結果、生産性が低い仕事に甘んじてしまってはいないでしょうか。

静かなオフィス環境で、整然とパソコンに向かっていれさえすれば、例えインターネットショッピングをしていても、仕事を遂行しているように見えてしまう、外見はスマートな仕事振りに見えますが、実がないと感じているのはうさぎだけでしょうか?。

■ 愛コミュニケーション

金八先生ではありませんが、時に部下を呼びつけて、“お前のメールのレポートはなっていない。このように修正しなさい!”とか、部下の方も“部長先程のメールの件ですが、詳細を説明させてください。”と上司に歩みよるといった補助動作が必要ではないですか?部下を育成する、上司をステップアップさせるには、人間愛を持った上司や部下が本気モードでぶつかりあってコミュニケートすることが大事だと思います。

仕事がら、色々な企業にお邪魔することがありますが、成りは小さくとも活き活きとした言葉が飛び交っている会社は、2、3年のうちに間違いなく伸びていっています。上司、部下がそれぞれ真剣に気迫を持って仕事をしているからこそ、“よくやった!”の誉め言葉が出たり、 “何やってんだ!”という怒号が飛び交ったり、“部長、この間の折衝、格好よかったですね!”のゴマすりでない尊敬の言葉が出たり、“次長さん、今日のネクタイ素敵ですね。”といったかわいい女子社員から優しい言葉の投げかけがあったり、そんな会社が、ドラマではなく、現実にもあるんですよ。

上司、部下の皆さん、スマートに仕事をするだけが能ではありません、どうか、恥ずかしがらずに、喜怒哀楽をもって、目一杯愛情を込めて“愛コミュニケーション”を今日から実行してみてください。何かがきっと変わってくるはずです。

思い出してください、プロポーズの時を。おそらく大半の方は、それこそドラマのセリフのようには格好よく決められなかったでしょう。余裕もないし、必死ですから、冷静にはできませんよね。でも相手の女性は、最終的にはあなたの申し出を受け入れてくれたんですよね。たとえ格好はよくなくても、そこに本当の愛が存在し、それを感じてくれたからこそ、OKサインが出たんですよね。

“愛コミュニケーション”というのは、そういうものだとうさぎは思います。どうか読者の皆さん、本気モードで愛コミュニケーションをしてくださいね。これが赤坂うさぎからのラストメッセージです。

■ 猫さんとうさぎ君

イソップ童話のタイトルではございません。この連載を続けてきたコンビ名です。なかなか、紹介させていただく機会もないままにこれまできてしまいました。“最後くらい、自己紹介をさせていただこうかなぁ。”そんな気持ちでこの項を興しました。しばしお付き合いください。

“うさぎ”こと赤坂うさぎは、元来のお喋り好きで、声は大きく、喜怒哀楽は激しく、上役へのゴマすりもできず、時としてオーバーアクションを交えての仕事振り、一言で言えば、 “でしゃばり親父”ですね。同僚や部下は多分やりにくいかもしれませんね。でも、その心は、部下の成長を絶えず期待しているからうるさく言うんですよね。なぜなら自分よりも長く生きて、社会に貢献してもらわなければ、日本丸は発展しないですから。自分より先に旅立つであろう上司にいくら媚びへつらっても仕方ないと思っている“天の邪鬼なうさぎ”です。

さて、そんなうさぎに10ヶ月もお付き合いしていただいた“猫ようこ”さん、うさぎと違ってとても控えめで奥ゆかしい人なんですよ。2000年に竣工した晴海トリトンスクェアの現場から帰任して以降に出会いましたので、もう足掛け5年強の同僚になります。本業は庶務・経理を担当されていますが、とてもほのぼのとしたタッチのイラストを描かれるので、今回お手伝いをお願いしました。できるだけ掲載内容にマッチした挿絵をと思い、打合せを兼ねて何回かランチ等をご一緒させていただきましたが、ゆったりとした会話でとても楽しい一時を過ごすことができました。読者の皆さんには、文章とイラストのコラボレーション、どのように受け止めていただけたでしょうか?この連載もいよいよ終了で少し寂しいうさぎとなっていますが、猫ようこさん、これからもいい茶飲み友達でいてくださいね。いつかまた、このような企画でご一緒できることを夢見るこの頃です。10ヶ月間本当にお付き合い頂きありがとうございました。

■ エピローグ

“うさぎの独り言”も今回で最終回となりました。都合10回連載させていただきましたが、途中降板を迫られる場面もなく、完結できましたのは、ひとえに、“塗装技術”の購読者の方々の温かなご支援の賜物と深く感謝いたしております。

低成長時代が長びき、明るい話も乏しく、殺伐とした感じが否めない状況下で、建設業界や塗装業界はもとより、広く社会という中で、何とか人間性の機微に係わるお話をして、人間本来の在り方に少しでも触れることができればいいなぁと思い、この連載をお引き受けしました。

その目的をどの程度達成できたかは、読者の皆様のご判断にゆだねるしかございませんが、還暦を目前に控えた赤坂うさぎ個人にとっては、自分を再確認する旅路となり、60歳以降の新たなるスタートに向けての羅針盤を心の中に設置できたことを大変ありがたく感謝している次第です。長いようで短い、短いようで長かったこの10ヶ月でしたが、充実した時を過ごせたことは間違いありません。最後になりましたが、株式会社理工出版社の野本さんをはじめとするスタッフの方々や執筆を続けさせてくださった読者の方々に御礼の言葉を述べさせていただき本連載の幕引きをさせてもらおうと存じます。また、いつの日か “うさぎのつぶやき”でお会いできることを楽しみにしております。

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