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粉体塗装技術レポート(文:野平修氏)*

Chapter 4

高耐候性ポリエステル粉体塗料から
超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料への展開(2)

超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料の位置付け

1. 超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料の構成と特質

超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料については、現行何社かが上梓あるいは上梓に向けて活動中であるが、その構成についてはノウハウに絡むところが大きく明らかにされていない。簡単に説明すると、一部例外を除き、大半は高耐候性ポリエステル樹脂と旭硝子のルミフロン系のフッ素樹脂をある比率でブレンドした塗料といえよう。フッ素樹脂を配合することで、特に耐候性を改善した粉体塗料である。

タイガーコーティング社のシリーズ86の場合、比重はおよそ1.4~1.8g/cm3、塗装可能面積は60μm厚として9.8~12.8㎡/kgである。塗面・艶については、平滑で、グロスは約30~50%と言える。色のバラエティーは超耐候性塗料ということで、高耐候性ポリエステル粉体塗料より選択性の範囲は狭くなっている。また、最低発注単位は、ソリッド色で60kg、メタリック色で300kgである。

2. 超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料(シリーズ86)とカイナー500系の性能比較

粉体塗装は、2006年に(仮称)仙台一番町計画のアルミカーテンウォールに国内で初めて本格的に導入した。以来、高耐候性ポリエステル粉体塗料(シリーズ58)を採用した案件を実現させるたびに、『日本ではフッ素でなければ駄目だ!』というような感覚的な論評を直接的、間接的に受けてきた。

筆者は、2005年にドイツ・オーストリアの中規模から超高層ビルに至る案件にポリエステル粉体塗料が採用され、十数年経年変化を受けた後も自然なエージング(老化)は散見されるものの、熱硬化型アクリル樹脂焼付け塗料に見られるようなチョーキング(白亜化)や褪色がほとんど見られず、十分に当初の景観を保っていることに着目し、環境保護の観点に立ち、2006年から積極的に国内への水平展開を開始した。

また、軽金属製品協会が『アルミニウム合金製建築材料用粉体塗装の耐久性評価委員会』を組織し、2010年の6月と9月に、筆者も主査として、大韓民国、ドイツ・オーストリーの外装材調査に参画させて頂いた。そこにおいてもポリエステル粉体塗料の優秀性を確認させてもらい、改めて粉体塗装の積極的展開を再認識した次第である。

高耐候性ポリエステル粉体塗料は十分な耐候性があり、通常のメンテナンスができるビル外装での使用には十分耐えうるものと判断しているが、タワー建築、極地建築物等、なかなかメンテナンスがし難い建築外装については、超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料(シリーズ86)が極めて有効であると判断している。しかし、前掲の表・1に示すように、価格差がかなりあるので、そのコストパーフォーマンスについて、お施主様や建築設計者に対して明示する必要があると考える。

粉体塗装の性能評価についてであるが、前述の軽金属製品協会が『粉体塗装性能評価委員会』を設置、協議を重ね、2014年12月に『軽金属製品協会規格 アルミニウム合金製建築材料粉体塗装性能評価方法』として公表した。

従って、ここでは、日本で焼付け塗膜性能の判断指標として長年採用されているAAMA(米国建築製造業協会)とヨーロッパで採用されているQUALICOAT(建築用アルミニウム塗装品質保証規格)と照合しながら、超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料(シリーズ86)とカイナー500系の性能比較を実施したい。

アルミカーテンウォールの表面仕上げに関する評価一覧表(クリックして拡大)

*野平修氏 野平外装技術研究所代表 元鹿島建設建築本部技師長

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