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うさぎの独り言

第九回

酒よ - 酒は百薬の長? -

■ 酒の唄

風呂上りに何の気なしにテレビを点けると“酒よ”が流れてきました。心に沁みるいい歌ですね。一人しみじみと飲む時にBGMとして流れていたら最高ですね。思わず酒量も上がりそうです。

それにしても、日本にはお酒をテーマにした歌が多いですね。

人を対象にした“兄弟酒”、“他人酒”、“夫婦酒”、“ふたり酒”、“おんな酒”、個人を対象にした“手酌酒”、“はしご酒”、“ひとり酒”、“別れ酒”、“思い出酒”、行事を対象にした“祭り酒”、“祝い酒”、“偲び酒”、そして一番多いのが、人間の感情を表した“悲しい酒”、“なみだ酒”、“ほろり酒”、“みれん酒”、“夢追い酒”でしょう。やはり、お酒は人間の感情と切っても切れないものなんですね。

“うさぎの独り言”もいよいよ最終回が近づいてきました。そろそろお酒の話をしてもいい頃合ですね。そこで今回は、お酒をテーマにお話しましょう。といっても演歌の世界を語るわけではありません。皆さんの多くが所属されている会社や職場での様々なシーンでのお酒について考えてみたいと思います。

■ うさぎ流、お酒の流儀

お酒の流儀については、既にたくさんの指南書などが出ていて、お酒の飲み方のマナーについてあれやこれやと書かれたものが多いですね。その反面、“酒の飲み方にいちいち文句を言うな!”とか“とにかく黙って飲ませろよ。”というような声も読者の方から聞こえてきそうですね。でも少しお待ちください。様々なビジネスシーンでお酒の席というのは付きもので、宴席がスムースにいった場合といかなかった場合で、仕事の成果に雲泥の開きが出たことを皆さん体験されていませんでしょうか?

宴席では、様々な立場の人々が一同に会するわけですから、その中で貴方のポジションということをよく理解しておかないととんでもない結果になってしまいます。会合の開始に当たり、宴席の主役級の方から“今夜は酒の席だから無礼講で。”等と言う言葉が発せられることが多いですが、無礼講でよいのは、あくまでも宴席の主役級の方のほうで、間違っても段取りした側が無礼講になってしまっては結果がよくありませんね。そこら辺を次節で考えて見ましょう。

■ 接待酒

うさぎ流の解釈では、接待酒、これは相手に対して何らかの感謝を示すために行なうものだと思います。従って、主役はあくまで相手サイドにあります。相手方が如何にリラックスして気持ちよく飲め、とても気分のいい感じで帰っていただけたら、宴席を催した意味は非常に大きいものとなります。

しかし、その反対になってしまったら、これはもうかえって逆効果となってしまいます。だから、接待酒の時には、貴方は絶えず緊張を持って、最新の注意を払いながら飲まないといけませんね。例え飲んでも飲まれない、これがあくまでも基本となります。人によっては、お酒を飲むとどうしても気が大きくなってしまう人がいますね。もし、このような所作をする事に自信がもてないようであったら始めから参画しないほうが懸命でしょう。

貴方は脇役的存在で、バイプレーヤーであることを忘れてはいけませんよ。飲んでも飲まれない、主役は別にいることを肝に銘じておく必要があるでしょう。

■ ゴチ酒

ゴチ酒、これは接待酒の全く正反対のもので、貴方が相手先から感謝されて飲ませていただくものです。主役は貴方ですから、お誘いに対してはあくまでも気持ちよく受けることが大事です。だから妙な遠慮をしてしまうと、相手との関係がかえってギクシャクしてしまい、おいしいお酒になりません。相手も貴方にどう対応していいかわからなくなって心理的にきつくなってしまうものです。どうか、思う存分、気持ちよくご馳走になってください。でも、ご馳走になりっぱなしではいけませんよ。翌日、ゴチになった感謝の気持ちを電話かメールで相手に伝えましょう。これをするだけで、相手とのコミュニケーションは円滑に続くと思います。

■ たかり酒

たかり酒、先輩が行きつけのスナックに内緒で行ってキープしてあるボトルをしこたま飲んで、最後、ワンフィンガーほど残して帰るやからが、貴方の周りにもいませんか?うさぎが行きつけのお店でも、バブルが弾けて以来、小遣いが激減したせいでしょうか、出来る限り、他人のふんどしでお酒を飲もうとする人々が増えているやに聞いております。無類の酒好きに多いパターンだそうですが、こんな飲み方、決して美味しくないでしょうに。こんなことをしていたのでは、いつまでたっても人間として大きく成長出来ませんね。

第一、そんなことを知った上司は、その部下のことを決して信頼しなくなりますから、ダメージはいよいよ大きいですよ。一般によく出来た先輩社員というのは、一生懸命仕事をして成果を出した後輩には、機会を見て必ずゴチ酒してくれるものです。そしてその酒は格段にうまいものになるでしょう。ゴチ酒を誘ってもらえるように日々研鑽されることをお奨めします。

どうか読者の皆さんはせこい飲み方だけは覚えないようにしてくださいね。

■ 仲間酒

仲間酒、これが一番おいしい酒かもしれませんね。気心が知れた仲間同士ですから、気遣い無用です。胸襟を開いて、我を忘れて、飲み・食い・語りお互い大いに盛り上がればいいと思います。難しいことは申し上げません。気の合う仲間で盛り上がれば、それこそ“酒は百薬の長”となるでしょう。飲むも良し、歌うもよし、踊るもよしです。お店に迷惑をかけない範囲でそれこそ無礼講でいいと思います。

人間、決して一人では生きていけません。自分の周りに頼りになる仲間がいてくれる程幸せなことはありませんね。時には、こういった飲み方も必要だと最近のうさぎはつくづく思っています。

■ 一人酒

人間、長く生きているといろんな事が起こりますね。仕事で、遊びで、恋愛で、それぞれ悩み苦しむことがありますね。そうして心がストレスで一杯になってしまったならば、一人でお酒を飲みに行きませんか。

音量を小さくしたバラード系のBGMが流れる静かな空間で、カウンターの止まり木に腰掛け、それまでの経緯をゆっくりと振り返りながら、考えを巡らせるのがいいんではないでしょうか?なんとなくもやもやとしてぼやーっとしていた頭の中が次第に整理されてくると思います。

止まり木と仲良しになる、これが一番ではないでしょうか。

■ 二人酒

二人酒、これはもう親友、恋人等、二人称で飲むお酒です。これは聞きかじりですが、心理学の世界では、45cm以内に接近して座ることを“恋人距離”と言うとか言わないとか・・・。

この距離で並んで座ると、相手の心理状態や息遣い等がはっきりと感じ取れますね。そんな状況の中で、本当に親身になって語り合うから、二人にとって最もいい結論が引き出されることが多いんだと思います。会話というシチュエーションの中で、お互いが本気モードで話し合うことが出来る、そのアシスト役としてお酒が最適というわけです。アルコールによる適度な酔いが、心身をリラックスさせ、自然体の会話が続けられるということだと思います。

うさぎはもう50も半ばで前述した色々なお酒を体験してきましたが、いくつになっても“二人酒”が一番おいしいお酒だと思っています。

■ うさぎとお酒

今回のテーマは、随分とくだけた内容になった感じもしますが、人生を重ねていく上では、本当に大切なものだとつくづく思います。

実は、うさぎは、新入社員の頃はほとんど下戸で、コップ1杯のビールで“赤坂うさぎ”ならぬ“赤うさぎ”になってしまっていました。その後、30年強、様々なお付き合いの中で人並みに飲めるようになりました。

そのお陰で、色々な局面で、お酒が“名脇役”を果たしてくれたことが数多くございます。そういう意味では、“一人酒”をする時には、お酒に対して感謝の気持ちを評しながら飲んでいる昨今です。どうか皆さんもお酒といい友達になることを願ってやみません。さて、夕日も沈みました。赤坂うさぎは、今宵も赤坂の街へ繰り出すことといたしましょう。

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