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環境対応型高品質焼付け塗装システムの日本における展開について(文:野平修氏)*

Chapter 3

パネル材カーテンウォールヘの粉体塗装仕上げ

─ 超高層ビルS新オフィスビル ─

S新オフィスビル全景

施主: S 設計: N建設計 施工: 鹿島東京建築支店 カーテンウォールメーカー: 現リクシル(旧トステム品質管理)、昭和リーフ蘇州工場(製造)

《超高層ビル外装の大型パネルを粉体塗装で》

2011年2月、M1計画に続き、超高層ビルの外装カーテンウォールの大型パネル材に高耐候性ポリエステル粉体塗装が採用された。フロアツーフロア、すなわち―階分を一枚の大型パネルで仕上げるという設計思想である。厚み3mm程度のアルミ板材にシルバーメタリックの塗装で仕上げたいとの要望である。

《如何に大型パネルのフラットネスを確保するか?》

耐候性の高いといわれているカイナー500系の熱可塑性フッ素樹脂焼付け塗装では、メタリック感を出すためにアルミフレークが塗料の中に分散されている。このフレークは光の当たり方に対する方向性があるので、太陽の高度や向きによってパネル材に当たる光の角度が変わっていくので、色味や質感が時々刻々変わってしまうという問題点があった。「それでも大型パネルにはしたい!」この強い設計要求を実現できるものはないか?辿り着いたのが、タイガードライラック社の開発した技術、ボンディングメタリックであった。これだとメタリック成分がおよそ球形に近いので光の方向性は発生しない。結果、色むらや色味の違いの発生を回避できた。高耐候性ポリエステル粉体塗装の優れた利点が大いに生かされたのである。

カイナー500系のエッジの付き回り

カイナー500系のエッジの付き回り

粉体塗装のエンジの付き回り

粉体塗装のエンジの付き回り

《パネル材のエッジの塗装》

幾ら耐候性のある塗料を使ってもエッジ回りの塗料の付き周りが悪いとそこから発錆する。粉体塗装はカイナー500系より付き周りがいいので防錆力が向上する利点がある。今回のディテールには非常に適した選択となった。

《難しい大型パネルの粉体塗装》

色むらの発生しにくい粉体塗料は用意できた。次は4mを超える大きなパネルをどうやつて粉体塗装するかである。自動ガンのストロークには限りがある。といって安易に手吹きにしたのでは1莫厚等の仕上がり精度に影響がでてきてしまう。なんとコーターがストロークを延ばせるよう塗装機械を改良してくれたのだ。海外の塗装工場は、ともすると、「日本は色々うるさい製造基準を押し付けてくるので嫌だ!」といったネガティブな発言をするところも少なくない。が、反対に、「日本の仕事をすることで、自分たちの技量が向上する。むしろチャンスである。」という反応が出てくるところもある。今回はまさに後者のケースであった。ラッキーであった。こうして今大崎駅前に35,000席もの巨大な高耐候性ポリエステル粉体塗装の外壁が凛として聳え立っている。

大型パネル材面の全景

大型パネル材面の全景

大型パネルの状況

大型パネルの状況

*野平修氏 野平外装技術研究所代表 元鹿島建設建築本部技師長

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