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粉体塗装技術レポート(文:野平修氏)*

Chapter 5

高耐候性ポリエステル粉体塗料から
超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料への展開(3)

超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗装の施工事例

日本において初となる超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗装の施工事例は、鹿島建設設計本部の設計で、東京建築支店が施工の新宿Mビル屋上パネルである。屋上という立地条件から障害物が全くなく、一般外壁より紫外線照射量が多いと想定されること、屋上工作物であることからメンテナンスフリーが要求されること等から、高耐候性ポリエステル粉体塗料の1ランク上のグレードの粉体塗料を採用することとした。

【工事概要】
・工事名:新宿Mビル制震工事
・所在地:東京都新宿区
・設計:鹿島建築設計本部
・設計監修:株式会社日本設計
・施工:鹿島東京建築支店
・パネル製造・施工:株式会社LIXIL
・パネル粉体塗装:株式会社マルシン
・粉体塗料メーカー:タイガーコーティング社

写真・1 屋上パネルの写真

本案件は、アルミパネルのユニットである。タイガーコーティング社の超耐候フッ素樹脂ハイブリッドメタリック粉体塗料を用いて、粉体塗装は、ヨーロッパのクオリコートという認定を取得している㈱マルシンで粉体塗装を施工した。なお、クオリコートとは、『建築用アルミニウム塗装品質保証規格』で、工場審査、製造する製品の塗膜性能が要求水準に達していると認定された場合、認定証が授与される、かなり高レベルの基準である。

実際の当該ビルでの塗装工程の写真を、写真・2~5に示す。また、塗膜性能試験結果の写真を写真・6に、モックアップ施工状況を写真・7に示す。

写真・2 塗装ブースへの投入

写真・3 自動ガンによる塗装

写真・4 塗装部のアップ(焼付け前)

写真・5 焼付け直後の状況

写真・6 塗膜性能試験結果

写真・7 モックアップ施工写真

粉体塗装は、ヨーロッパ、東南アジア、韓国や中国においては、既に建築の分野においても内外装のパネル類やカーテンウォールにかなり適用されている。塗装工事における環境対応について真摯に受け止め、塗料の選定、ラインの整備に力を入れているのだと判断する。

これに反し、日本の建築の分野では、未だフッ素樹脂を始めとする溶剤型塗料による焼付け塗装が主流である。もちろん、私も20年来、フッ素樹脂を扱わせてきていただき、この塗料の優秀性は実感しているところである。

しかし、2000年以降の環境対応の要請は年々厳しくなっており、日本においても、塗料メーカー、塗装工場ともそれへの対応を真剣に考えるべき時期に来ていると思う。

実際、『外装カーテンウォールにも粉体塗装を!』という機運が、超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料が上梓されたのをきっかけに、国内の建築業全体に次第に浸透してきているように感じられる。それは、大手デベロッパーや設計事務所を中心として、“環境を大切に!”、“建物の恒久化を!”という流れが急速に拡大しているせいではないだろうか。

先般、QUALICOATの最上級性能レベルである、クラス3の認可を受けたタイガーコーティング社の超耐候フッ素樹脂ハイブリッド粉体塗料、シリーズ86が上梓され、当社もその材料を活用して、第一号案件を手掛けるに至ったことは、今後、『100年建築』と言われる建築物の恒久化に向けて明るい兆しを投げかけられるものと自負している。

筆者は、国内塗料メーカーにおいても、一日も早くクラス3の認可を受け、 名実ともに粉体塗料の最上位グレードを供給できる体制作りを期待している。

*野平修氏 野平外装技術研究所代表 元鹿島建設建築本部技師長

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